Now Loading
漢方相談50音順
漢方相談疾患分類順
弁証論治
舌診
夏の冷え性
夏の脳養生
夏の胃腸障害
帯下
インフルエンザ
男性更年期
尿漏れ
慢性頭痛
高血圧
花粉症
皮膚のトラブル
認知症
乾燥トラブル
メタボリック・シンドローム
耳鳴り・難聴・耳聾
夏バテ対策
風邪症候群
熱中症
肥満
免疫力アップ
糖尿病
腸管免疫
むくみ(浮腫)対応
フレイル対応
健康寿命を伸ばせ
誤嚥性肺炎予防
コレステロールと中性脂肪対策
帯状疱疹 予防・対応
こむら返り対応
女性 不妊・妊活
紫外線対策
骨粗鬆症対応
食の養生
疲労の養生
肛門痛痒い
咽喉(のど)トラブル対応
コロナ後遺症対応
便秘解消



副題

「とんでもない話。漢方薬は病院にも患者にも医療費全体にもプラスになっている」と、衣笠病院(神奈川県横須賀市)薬剤部の赤瀬朋秀部長は断言する。

赤瀬さんは漢方薬と西洋薬の比較調査をし、2000年4月の日本東洋医学会雑誌に発表した。鵡川厚生病院(北海道鵡川町)と伝統医学研究会あきば病院(千葉県蓮沼村)、それに当時勤務していた北里大学病院(神奈川県相模原市)を97年12月-98年2月に受診した風邪症候群患者875人のカルテを調べた。多くは"流行期に当たったインフルエンザと考えられた。

西洋薬、漢方薬、併用群に分けて処方の実態をみると、西洋薬群では平均2.9剤を6.7日分出し、漢方薬群は1.2剤4.O日分だった。当時の薬価で、西洋薬群は1日分204円、総額1,357円。これに対して漢方薬群は1日分120円、総額485円。漢方薬は西洋薬より1日分では4割安、総額では6割以上も安く済んだ。

併用群の総額も西洋薬単独より2割安かった。漢方薬群での処方は麻黄湯、桂枝麻黄各半湯、桂枝湯、小青竃湯の順だった。「風邪を漢方薬で治療すれば、国の医療費は年400億円減る」と赤瀬さんはいう。

昨年6月の日本東洋医学会では、斐川中央クリニック(島根県斐川町)の下手(しもで)公一院長が、漢方薬は病院や診療所の経営に貢献し、患者にも喜ばれると報告した。

下手さんは、療養型病床群と呼ばれる200床の病院で病院長を務めていたときに、本格的に漢方薬を導入した。脳卒中後遺症や認知症(痴呆(ちほう)症)の患者が多かった。

副題 「驚いたことに薬代が半減した」。西洋薬だけを使った97年は1日1人当たり1,394円の薬代がかかったのに、併用した98年は741円。療養型病床群の医療費は定額なので、年に4,700万円の節約は、そっくり病院の増収になった。漢方薬の併用で、抗生物質や抗不安薬、睡眠薬から胃腸薬、点滴、ビタミン剤まで軒並み減り、とくに抗生物質は7分の1に激減した。

当帰芍薬散、人参養栄湯、十全大補湯、八味地黄丸などの漢方薬代は1日分117円。しかも、感染症にかかりにくくなり、食欲が増し、徘徊(はいかい)や暴力も減ったという。

下手さんは99年の開業後も積極的に漢方薬を処方した。複数の診療所との比較で、病気1件あたりの薬代では4割安く、診療所全体では年間約8,500万円少ない計算になった。

患者負担が少ないので患者が増え、経営にプラスという。「漢方薬は患者の免疫力を高めるし、複数の症状に一つの薬で対応できるのが強みだ。私の報告を聞いて、漢方薬を導入した病院が増えている」と下手さんは話す。

国と企業との力関係から漢方薬の薬価は低く抑えられている。生薬の生産国・中国の通貨切り上げが見込まれ、漢方薬が値上がりする可能性はあるものの、西洋薬との差はまだ大きいので、当分は「安い漢方薬」時代が続きそうだ。

by 讀賣新聞(夕刊)2005年(平成17年)1月20日(木)