【脈診の解説】
青龍 脈診

手首の脈をとる脈診の解説です。脈診とは、人差し指、中指、薬指の3つの指端をもって、病人の脈拍に触れ、その脈象を弁別し、望、聞、問の三診と結合させ 疾病の陰陽表裏、寒熱虚実を診断することです。
脈診は、切診の中でも特に多用されるため、舌診と並んで最重要な診察項目になっています。

脈象の形成は、気血、臓騎と密接な関係があるので、当然ながら気血臓腋の病理変化は血脈の運行に影響を及ぼし、脈象も変化が起こるはずです。
従って、脈象の診察を通じて疾病の病位、性質を理解し進展予後を判断することができます。

脈診で見分ける脈の証
実虚 脈の形態 脈象 寒証が加わると 熱証が加わると
虚証
(脈が虚弱)
気虚 力のない弱い打ち方 虚脈 脈は遅く、沈(指を強く押しつけないと感じられない打ち方)になります。 速く打つ頻脈になります。
血虚 細い感じのする打ち方 細脈
実証
(脈が有力)
気滞 弓の弦を弾くような打ち方 弦脈
血オ 血の流れが滞っているような
感じがする打ち方
渋脈
痰湿 なめらかに打っている 滑脈

脈診は手指の先端で患者の脈拍を触取するもので、僥骨動脈の拍動部を寸・関・尺の三部に分けて、左右両腕で全部で六脈があり、それぞれに臓腑があります。
寸・関・尺の手の図
寸・関・尺の手の図


脈象の二十八分類
脈綱脈名至数力の強さ形態臨床備考
浮脈類 浮脈(ふみゃく) 浮取では力があり、中取・沈取すると弱くなります。 来る脈が皮膚の表面に浮き、軽く押えると指下に感じます。 表証。有力は表実証、無力は表虚証です。 慢性病・大出血などで見られれば、重篤です。
洪脈(こうみゃく) 来る脈が大きく、指下に満ち、来るときは盛大で去るときはやや衰えます。 実脈と大脈の合わさったものです。来盛去衰。 裏実熱。邪気の高ぶりに見られます。
濡脈(なんみゃく) やや弱い。来る脈はきわめて細く、きわめて柔らかくて浮き、軽く取ってすぐに得られ、重く押さえると得られません。 浮・軟・細のものです。 気血不足・湿証。虚証。
散脈(さんみゃく) 弱い。来る脈は浮いて乱れ、しかも散っています。中くらいに取ると空に近く、重くとると感じられません。 浮大で、中取・沈取ともに空虚です。 心腎陽虚・亡陽。腎気衰敗証。
孔脈(こうみゃく) 弱い。脈形はねぎの芯のようで、浅くあるいは深く、両側でうかがうと両側ともに得られます。中程度でうかがうと空虚です。 浮大で、中取で空虚、沈取でやや触れる、葱の管をおさえるような感じです。 失血・津液の消耗。大失血症に見られます、例えば吐血、鼻血、崩漏などの病です。
革脈(かくみゃく) 膨らみ、急で、鼓膜を按ずるようです。 浮取で弦硬、沈取すると中空です。 気虚・腎精不足。表寒極盛の証、精血虚寒証。 孔脈とほぼ同じです。
沈脈類 沈脈(ちんみゃく) 浮取・中取では触れず、沈取して初めて触れます。。 来る脈が筋骨間に沈行し、重く当ててはじめて顕著となり、軽く当てたのでは感じられません。 裏証。有力は裏実証、無力は裏虚証です。 寒証・肝気欝結・気滞血オでも見られることがあります。
伏脈(ふくみゃく) 脈象は隠伏し、筋を骨に届くくらいに押すと、はじめてその形が得られます。 沈脈よりもさらに沈です。 激痛・邪盛・亡陽。邪閉・厥証。
牢脈(ろうみゃく) 沈取で有力です。来る脈は大きく弦実です。 浮・中取で触れず、沈取で弦・大・長のものです。 頑固な疾病です。積聚証。 沈弦・沈実といいます。
弱脈(じゃくみゃく) 無力です。来る脈は細くて小さくて沈みます。重く押さえると得られ、軽く押さえると感じられません。 沈・軟・細のものです。 陽気不足。気血不足証。
遅脈類 遅脈(ちみゃく) 一息に3至以下、1分間50前後(60以下)です。 来る脈が緩慢です。 寒証(実寒・虚寒)。有力な脈は冷積証、無力な脈は虚寒証です。
緩脈(かんみゃく) 一息に3至以上4至以下、1分間50〜60 やや無力です。 大でも細でもないです。来る脈はゆるやかで調和がとれています。 実熱あるいは虚熱です。 一般に平脈をあらわします。
渋脈(じゅうみゃく) 来る脈が難渋です。 脈拍が滑らかでなく、小刀で竹を削るように触れます。 血虚・血オ・気滞・精傷証。
結脈(けつみゃく) 脈が緩慢で、時には止まります。 来る脈が遅くゆるゆるして、時に止まるのが見られます。 陰盛気結証
数脈類 数脈(さくみゃく) 一息に6至以上、1分間90以上です。 来る脈が急速です。 熱証(実熱・虚熱)。有力は実熱証、無力は虚熱証です。 気虚・陽虚でも見られることがあります。
促脈(そくみゃく) 一息6至以上、1分間90以上 来る脈が急促し、時には止まることがあります。 脈拍が不規則に欠落します。 実熱に気滞・血オ・痰飲を伴います。陽盛実熱証・気滞オ血証。
疾脈(しつみゃく) 一息に7〜8至 来る脈が疾急で、脈形は非常に躁急です。 陽極陰竭証、病症重篤。
動脈(どうみゃく) 一息6至以上、1分間90以上 有力。動脈は、関上に見られます。 滑・数・短のもので、豆のような形です。 疼痛・高熱・妊娠・驚きなどです。
虚脈類 虚脈(きょみゃく) 無力です。浮取で触れ、強くおさえるほど減弱します。 脈形が大です。来る脈が浮いて遅軟で,脈を尋ね当てられないです。 虚証。多くは気血両虚。 各種の無力な脈の総称です。
細脈(小脈)(さいみゃく) 軟らかいです。 脈形が細い。来る脈は糸のように細くて柔らかい、しかし、微脈に比べればはっきりしています。 気血不足・陰陽両虚。気血虚証。 血虚・陰虚が多いです。
微脈(びみゃく) 不明 非常に弱いです。来る脈がはっきりせず、きわめて細く、きわめて柔らかく、あるようでないようで絶えそうで絶えないです。. 非常に細く、あるかないかはっきりしないです。 陽虚。亡陽の証に見られます。常に腎陽気衰弱および急脱(ショック)の病人に見られます。
代脈(たいみゃく) 定数なし。 脈は慢弱。時には止まります。 脈拍が規則的に欠落します。 心気虚。臓気衰弱証。
短脈(たんみゃく) 来る脈は短くて渋って小さく、初めと終りは無に近く中間で突起し本来の部位に届かないです。 脈形が短いです。 気血不足・痰・気滞。元気虚衰。
実脈類 実脈(じつみゃく) 有力です。浮・中・沈取すべて充実です。 来る脈が充実して力があり、長大で堅実です。 実証 各種の有力な脈の総称です。
滑脈(かつみゃく) 脈形の往来が流れるようで円滑です。 去来が早く、なめらかで盆に珠をころがすように触れます。 痰飲・食積・実熱。 妊娠時にも見られます。
緊脈(きんみゃく) 一息6至以上、1分間90以上です。 有力。来る脈が緊張し力があります。 弦・数・有力なもので、脈が左右にゆれる感じがします。 寒証・疼痛。宿食。
長脈(ちょうみゃく) 来る脈がきわめて長く、直上直下し、本来の部位を過ぎます。 脈形が長いです。 熱証。実証。陽気有余。 長脈だけのときは正常です。
弦脈(げんみゃく) やや有力のことが多いです。来る脈は大きくて弦(弓のつる)で急、浮取するとすぐ感じられるが、押えると空であり、鼓の皮を押えるときのように、外が強く中が空です。 脈形が長くまっすぐで、琴の弦をおさえるように触れます。 肝胆の疾病・疼痛・痰飲。
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